編集の仕事というのはきっちりと周期があって、俺と吉野の関係もそれに振り回されているように思う。 プロットやネームで頻繁に打ち合わせをするときは、足繁く吉野の家に通っているのでそれなりに顔を合わせる時間も多い。 もちろん顔を合わせるだけでなく、恋人同士なのでやることもやる。 奇跡的に吉野のネームの上がりが早い時などは、朝からいちゃいちゃすることだって不可能ではない。 ただし進行が毎回早めに進むことは不可能に近いかもしれないが。 そうして、今度は徐々に顔を合わせる機会が減っていく。 修羅場中はお互い疲弊しきっているので、たまに顔を出したとしてもキスを一つ二つして頑張れと励ましておしまいだ。 (……千秋を抱きたい) 徹夜明けの朝日のまぶしさは、人の脳をおかしくする。 無事校了も済んだという高野さんのお達しを受けて、よろよろと俺は帰宅した。 帰宅したつもりが帰宅していなかったらしい。 いや、家には帰っているのだがそこは自分の家ではなく、厳密には帰宅ではないと思う。 「あ……おかえり」 「ただいま……」 ゾンビのように床に寝転がる吉野を引っ張り上げて寝室に運ぶと、自分も仲間になるべく吉野に襲い掛かった。
「千秋、風呂くらい入れと言っただろう」 「……ん……あッ、そー思う…んなら帰って早々盛んな!…ア……」 はっきり言って汗臭い吉野の肌を舐めまわしながら説教をすると、喘ぎながら抗議された。 首筋に歯を立てると面白いくらい腰が跳ねる。 シャワーくらい浴びさせてやりたいとは思うのだけど、もう自分の衝動を抑えることはできそうになかった。 吉野の体臭も馬鹿みたいに俺を煽る。 どうせ最終的には汗と体液まみれになるのだ。 抱き合うのに何の支障もないだろう。 「ッちょっ、嗅ぐなって…!くすぐった……ン……っ」 やめろというわりに腕に力が入っていない。 鼻先を押し付けるようにしながら口で身体全体をまさぐると、観念したのかもぞもぞと腰の辺りを押し付けてきた。 いまだに照れでしてほしいことを口に出して言えない吉野の精一杯のアピールだ。 口角を吊り上げて吉野の顔を覗き込むと、聞こえるか聞こえないかの微かな声で早くしろ、と言われた。
恥ずかしいからとにかく舐めるのだけはやめてくれという懇願だけを聞き入れて、唇を貪りながら身体の奥を探る。 敏感な場所を擦るときだけわざと唇を離して、快感に押し出される悲鳴を堪能した。 「どうした?いつもよりすごい声だな」 「バッ……もうしゃべんなって……あ…ッ」 自分の声を抑えるために口元を押さえてこちらを睨んでくる。 「なんで?ずっと会えなかったのに」 もう何日も仕事でのやりとりしかしていない。 もっと千秋の甘い言葉が聞きたい。 もっと俺の好きだという気持ちを聞かせてやりたい。 そう思っているのに。 「千秋、お前の声が聞きたい。お前にもっと好きって言いたい」 「や…め…あ、ああ、ああ……ッ」 「……!?」 抗議の文句もそこそこに、吉野の下半身がガクンと崩れ落ちた。 「も……だからヤダ……っつって…」 荒い息を整えながら涙目で吉野が訴える。 もしかして、と俺は思いついたことを口にした。 「お前、俺の……」
「そーだよ!!声に弱いんだよ!!なんか文句あるか!!」 そう逆ギレされたけれど、文句など一つもないので弱点を自らさらしてくれたことに感謝して鼓膜を攻めるのを続行した。 END |